アロマ空間デザインとは、目的や空間に合わせたアロマを用いることで、より心地よく感じる、または空間そのものに好印象を与えよとする考え方・技術を指します。
ある建物や空間に入った瞬間、特定の香りを感じたことはありませんか?図書館の奥で出会う古書の香り、リゾートホテルにおける南国を思わせるような甘い香りなどが例に挙げられます。香りはそのものが記憶を想起させる効果を持つことから、上記のような例でも、簡単に情景を思い出すことができるでしょう。
このように香りによって記憶や情景を想起させることや、空間に滞在したいと思わせることこそ「アロマ空間デザイン」の強みです。本記事ではアロマ空間デザインについて、基本的な情報からご紹介していきます。
- 香りによる印象付け・ブランディング
- 施設・サービスのリピート率アップ
- 購買意欲向上に貢献
アロマの空間デザインとは?
まずアロマ空間デザインとは、そもそもどのようなものなのか?といった基本情報から見ていきましょう。アロマ空間デザインを用いることで効果が得られる仕組みなど解説いたします。
香りに機能性を持たせる
天然のアロマに含まれる芳香成分には、特定の効果が見込めると判明しています。有名な効果を上げれば、以下のようなものが挙げられるでしょう。
- ラベンダー:リラックス効果・安眠効果
- レモン・ミント:リフレッシュ効果・集中力アップ
- ローズ:リラックス効果・女性ホルモンの活性化など
香りには一定の効果があると判明しているため、目的に沿った効果を持つアロマを用いれば、空間そのものに機能性を持たせることも可能です。例えば、寝室にラベンダーの香りを漂わせて安眠効果アップ、業務効率アップを期待してオフィスにレモンの香りを用いるなどが挙げられます。
心地よいと感じられる香りを漂わせるだけでも、空間に対するイメージはよい方へ向上します。それぞれの香りが持つ効果を合わせることで、様々な目的に合わせた利用法を見つけられるでしょう。
「視覚」と「嗅覚」を連動させる
基本的に嗅覚を含むいわゆる「五感」は連動していると考えられます。鼻をつまんだ状態で料理を食べると、あまり味がしないと聞いたことはありませんか。この感覚と同じように、視覚と嗅覚も連動しています。
木材を使用したナチュラルな雰囲気があるインテリアに、冷たい金属を感じさせるようなクールな香りを合わせてみるとどうでしょう。違和感を覚えることで、せっかくのアロマ空間デザインが逆効果になりかねません。
一方、インテリアに合わせた温かみを感じさせる香りにすると、視覚と嗅覚が正しく連動します。目から入る情報と嗅覚で感じる情報に違和感を覚えないため、自然な雰囲気を演出することができるでしょう。香りを厳選すれば、屋内に居ながら森林浴をしているようなすがすがしさを演出することも可能です。
したがってアロマ空間デザインでは、香りをしっかり厳選することはもちろん、視覚に合わせた香りをチョイスすることも重要だといえます。
アロマ空間デザインの効果は?
アロマ空間デザインを用いることで、空間そのものの印象アップが期待できると分かりました。では、もう一歩踏み込んで、アロマ空間デザインを利用する効果やメリットにはどのようなものが期待できるのでしょうか?ここではアロマ空間デザインを用いることによって得られる効果・メリットについてご紹介いたします。
01ブランディングへ貢献
アロマ空間デザインを用いることで、ブランディングへの貢献が期待できます。そもそもブランディングとは、ブランドに対して好印象を抱いてもらう、愛着を抱いてもらうことで企業そのものの価値を顧客に知ってもらうことです。
上記までで触れてきたように、香りは人の記憶や情動に深く結びついています。特定の香りがする場所・ブランドで受けたサービスは、ブランドとは関係のない場所であっても、同じ香りをかぐことでブランドを思い出してもらえるのです。
香りに結び付いた記憶を、特定の香りに出会う度に反芻してもらえることで、知らず知らずのうちにブランドへの印象アップの効果が期待できます。このことから転じて、心地よいサービスを受けたいと考えた際には、香りで覚えている企業・ブランドにしようと思ってもらえる期待も高まると考えられるでしょう。
02リピート率のUPへ貢献
心地よい香りで空間を演出することは、リピート率UPの効果も見込めるとされます。単純に好まない香りがする空間には、長期間滞在したいとは思えないものです。
このことを反対に考えれば、心地よい香りがする空間であるほど、該当の空間に対して好印象を持ちやすいとも考えられます。ある特定の商品やサービスを受けようと考えた際、多くの方はコストなど条件面から特定のサービスを選びます。アロマ空間デザインにおいては、この条件に「香りによる心地よい経験」をプラスすることが可能なのです。
そして心地よいと感じてもらい繰り返し利用してもらうことで、空間そのものやサービスに愛着を覚えてもらうこともできるでしょう。顧客リピート率を上げたいと考える場合、商品やサービスに愛着を感じてもらうことは必須のポイントです。
空間に香りを演出することで、他商品やサービスとの差別化を進め、プラスの印象を加味し、よい記憶を覚えてもらいやすくなるでしょう。それぞれの相乗効果によって、大幅なリピート率UPも期待できます。
03購買意欲のUPへ貢献
上記でも触れたように、心地よい香りがする空間では滞在期間が長くなる傾向があります。そして購買意欲向上を目指す際に、該当施設やショップ内の滞在期間も関係しているのです。
なぜなら滞在期間が長いほど、購買意欲も向上しやすいとされているからです。2018年にJR東日本企画が運営する「jeki駅消費研究センター」が実施した実験「駅ビル回遊行動調査(※1)」では、購買意欲があり滞在期間が短い方より、購買意欲がなく滞在期間が長い方の方が購入率や購入金額が高いという結果が出ました。
購買意欲が高かった方より、滞在期間の長さによって購買率、購入額ともに変化があるという結果には驚いた方も多いでしょう。多くの方にとって心地よい香りを演出できれば、それだけ購買意欲を高めることつながるのです。
04集中力できる空間作りに
特定のアロマが持つ効果によって、空間そのものに機能性を持たせることも可能です。上記でも軽く触れた、集中力アップ効果が見込めるレモンやペパーミントをベースとした香りを漂わせれば、集中しやすい空間を作り上げることができるでしょう。
なおレモン・ペパーミントのアロマを用いることで集中力が向上することは様々な実験で明らかにされています(※2)。
ちなみにアロマ空間デザインで用いられる香料は、基本的に天然由来のアロマオイルになります。したがって特定の植物にアレルギー反応さえなければ、年齢を問うことなくアロマの効果を実感できるでしょう。健康被害が少ないという面も大きなメリットだと考えられます。
アロマ空間デザインの活用シーン
様々な効果が期待できるアロマ空間デザインですが、実際にどのような施設・シーンでの利用が想定されるのでしょうか?ここではアロマ空間デザインを活用しやすい施設・シーンについて解説いたします。
ホテル・旅館
香りによる空間デザインの中でも、現在最も活用されているケースがホテルや旅館だといえるでしょう。特に高級ホテルにおいては、ホテルで利用されているアロマをお土産として販売しているケースも多々見られます。
特定の香りとホテルや旅館という非日常感を組み合わせることで、より特別な日々だったという記憶を残しやすくなります。またホテルや旅館のコンセプトと香りを合わせることで、ホテルに入った瞬間から外界と隔絶された非日常感を演出することも可能になるでしょう。
ショップ・ショールーム
ブランドショップや特定の商品に特化したショップ、ショールームなどでも香りの演出は有効です。ブランドや扱う商品を想起させる香りを漂わせることで、よりショップ特有の世界観を演出することが可能になるでしょう。
またいつも同じ香りを用いることで、ブランディング効果も期待できます。複数店舗を展開している場合は、香りが漂ってくることで、いつも訪れる場所以外でもショップに気付いてもらえるという効果も期待も考えられます。
歯医者・美容整形外科
歯医者や美容整形外科などを筆頭に、医療施設でもアロマ空間デザインを用いることでプラスの効果を演出できるでしょう。病院=怖いというイメージを払拭しやすくなります。
また活用する香りを選ぶことで、清潔感を覚えてもらうことも可能です。実際にアットアロマ株式会社が行ったアンケート結果(※3)では、香りを用いた病院・介護施設やヨガクラブなどで「清潔感を覚える」という声が多かったのだとか。
なお歯医者や美容整形外科など、医療施設の中でも美容に関係した施設の場合は、アロマ空間デザインを用いることで高級感やおしゃれな印象を持たせることもできます。
その他活用シーン
アロマ空間デザインでは、香りが持つ効果を空間に付与し、空間そのものに機能性を持たせる活用方法もあると触れました。香りの効果自体にスポットを当てるのであれば、以下のような活用方法が見込めるでしょう。
- オフィス
- コワーキングスペース
- 塾
- ネット・マンガ喫茶
- ゲームセンター
- 水族館
- 美術館
- 博物館
オフィスやコワーキングスペース、塾においては集中力アップの効果が見込めるアロマがおすすめです。またネット・マンガ喫茶やゲームセンターでは集中力アップと共に、ポジティブな気持ちになれるアロマなども適しています。
水族館・美術館・博物館などはリラックス効果など、気持ちを落ち着かせる香りが適しています。よりそれぞれの世界に没入できる空間を作れるかもしれません。
アロマ空間デザインの導入事例
ここではアロマ空間デザインとして、弊社が行ってきた実際の導入事例を紹介いたします。実例を確認することで、よりアロマ空間デザインとはどのようなものなのか、得られる効果について確認しやすくなるでしょう。
ホテルの事例
ホテルフラッグス諫早様に導入した事例です。宿泊はもちろん宴会や結婚式など、多様な目的でホテルを利用されることもあり、第一印象を決めるエントランスにおける香りの演出を望まれていました。
ホテルのキャッチフレーズが「いつも寄り添える場所をあなたへ」であること、エントランスという人が多い場所への導入であることも考え、万人受けしやすいシトラス系の香りを選択。高い拡散力を持つ「シュバリテエール」を用いることで、隅々まで香りを行きわたらせることに成功しました。
また香りの拡散力だけではなく、フレグランスが持つ奥行きのある表現力にも満足いただけたようです。飽きが来ない香りであるため、長時間の滞在でも香り疲れを起こすことなく、リラックスできる空間を実現できました。
ディフューザーの導入効果
- エントランスへ香りの導入、チョイスした香りは万人受けしやすいシトラス系
- 上質なフレグランスを選択することで、長時間の滞在でも飽きない香りを提供
- 2週間の無料トライアルで効果を事前に確認
ホビーショップの事例
株式会社SOOTANG HOBBY様への導入事例です。ホビーショップでありつつ美術館のような空間を目指し、香りにもこだわることでお客様の長時間滞在を狙いたいとのことからご相談をいただきました。
ショップの立地が表参道であるため、他にもおしゃれなショップが多いことから、香りによる差別化は大きなポイントになったことと感じます。選択した香りはシトラス系にハーブの香りをプラスした「アクアヴェルデ」、実際に店舗でいくつかの香りをお試しいただいた上で、お気に入りの香りを選んでいただきました。
まずは2週間のトライアルからお試しいただいたところ、ショップの担当者様やお客様から「とても良い香り」など、多くの感想をいただきました。
ディフューザーの導入効果
- ショップ全体への導入、選択した香りはアクアヴェルデ
- 大型ディフューザーでショップ全体にパワフルに香りを拡散
- 視覚と嗅覚からアプローチするおしゃれな空間を実現
まとめ
- アロマ空間デザインは香りと視覚を連携させられる
- ブランディング・リピート率アップに貢献
- ホテル・ショップ・医療施設からオフィスまで様々なシーンで活用できる
今回は少し目新しい言葉である「アロマ空間デザイン」についてご紹介いたしました。インテリアや照明による空間デザインは古くから存在しますが、香りも空間デザインに貢献するという考え方は、目からウロコに感じた方も多かったのではないでしょうか。
香りという目に見えないけれど、日常的に接している感覚は、ごく自然なものだからこそ気が付きにくいのかもしれません。しかし日常に直結している感覚は、裏を返せば普段から無意識のうちに好悪の判断に使われているとも考えられます。
より心地よい香りを演出することで、知らず好印象を積み上げることにもつながるでしょう。ただし香りの選択や的確に香りを広げるには専門知識が必要です。香りによる空間デザインをしたいと考えた際には、香り・匂いのプロフェッショナルを抱える弊社にお気軽にご相談ください。