フローラル系の甘い香りとシトラス系の爽やかな香りを併せ持つ「ネロリ」。上品でありながら、わずかに引っ掛かる苦味を感じさせる香りによって、印象に残りやすい特徴的なアロマです。
アロマとしてのネロリは数多あるオレンジの品種の内、ビターオレンジの「花」から抽出されます。ただ希少価値が高いこともあり、実際に香りをかいだだけで「ネロリの香りだ!」と気が付ける方は少ないでしょう。
香りがよいだけではなく、ネロリはその高い鎮静効果から「天然の精神安定剤」とも呼ばれています。ではそんなネロリとは、いったいどのようなアロマなのでしょうか。
本記事ではネロリの基本情報はもちろん、気になる効果効能・おすすめの使い方まで詳しくご紹介いたします。
- 不安な気持ちをなだめてくれる鎮静・抗うつ作用
- PMS・更年期障害の緩和
- スキンケアにも有用
ネロリの香りの特徴
先述したように、ネロリは数多あるオレンジの品種の中でも、ビターオレンジ(ダイダイ)の「花」から抽出されるアロマです。
ビターオレンジは、ネロリの他にも果皮から「ビターオレンジ」枝葉からは「プチグレン」と呼ばれるアロマを抽出できます。まさにその全体で人にとってプラスの効果効能を持つ、アロマを生み出してくれる植物だともいえるでしょう。
ではビターオレンジから採れるアロマの中でも「ネロリ」とはどのようなアロマなのでしょうか。ここではネロリの香りの系統・香りのもととなる芳香成分について解説します。
ネロリの系統
ネロリの香りの系統は、ビターオレンジの花から抽出されるアロマであるため、基本的には「フローラル系」です。ただ、柑橘を思わせる爽やかさやほろ苦さを併せ持っているため、女性に限らず男性でも使いやすい香りだといえるでしょう。
アロマの名前が「ネロリ」とされた由来は、17世紀のイタリアに存在した「ネロラ公国」の公妃、アンナ・マリアが好んで付けた香りだったことにちなむとされます。世界最古の香水とされる「ケルンの水」にも使われていたため、古くから多くの方に愛されてきた香りだといえるでしょう。
なおネロリは水蒸気蒸留によってアロマオイルを抽出しますが、この際に副産物として、ごく微量の精油を含む蒸留水ができます。「オレンジフラワーウォーター/ネロリウォーター」と呼ばれ、お菓子作りの材料・化粧水などにも利用されています。
ネロリの芳香成分
ネロリに含まれる主な芳香成分は「リナロール」「リモネン」「β-ピネン」「酢酸ネリル」「酢酸リナリル」「γ-テルピネン」などが挙げられます。
他にも様々な芳香成分を含んでいるからこそ、ネロリの複雑な香りを実現できているのでしょう。それぞれの香りの特徴は以下になります。
香りの方向性 | 芳香成分 |
---|---|
フローラル系 | リナロール・酢酸リナリル・酢酸ネリル |
シトラス系 | リモネン |
ウッディ系 | β-ピネン・γ‐テルピネン |
リナロール・リモネンがそれぞれフローラル系やシトラス系の香りのもととなり、ウッディ系の香りを担うβ-ピネンやγ‐テルピネンによって、ネロリ特有のわずかな青さを演出しているというような感じになりますね。
また、同じフローラル系であっても香りの系統はそれぞれで異なり、リナロールは甘さの中に青さを感じさせる香り、酢酸リナリルは花の香りとシトラス系の香りを合わせ持ちます。それぞれの香りはあくまでも傾向であることも知っておきましょう。
アロマの知識を持っている方の中には、ビターオレンジの花から抽出されるネロリの「光毒性」が気になる方もおられるかもしれません。
光毒性とは精油が肌についた状態で光(紫外線)に当たると、やけどや色素沈着など、肌にダメージを与える作用です。
ビターオレンジのアロマオイルは特に、この光毒性が強いため心配になる方も多いでしょう。しかしネロリは光毒性のリスクが基本的にないとされます。
光毒性は柑橘系のアロマ全般にあると誤解されがちですが、実際には紫外線に反応する成分が含まれているか否かによって異なります。
紫外線に反応する成分は「フロクマリン類」であり、ネロリに含まれるフロクマリン類はごく少量であるため、光毒性の心配はないと考えて問題ありません。
ネロリの基本情報
学名/科名 | Citrus aurantium/ミカン科 |
---|---|
花言葉 | 花嫁の喜び/純潔/繁栄と多産 |
精油名 | ネロリ |
抽出部位 | 花 |
抽出方法 | 水蒸気蒸留法 |
香りの強さ | 強め |
ノート | ミドル |
主な産地 | イタリア/フランス/モロッコ |
注意事項 | 特になし/リモネンが含まれるため、シトラス系の精油に刺激を受ける方は要注意 |
ネロリの効果と効能
ここまでネロリの香りや基本情報について紹介してきました。では実際のところ、ネロリの香り・アロマを用いることでどのような効果効能が期待できるのでしょうか。ここからは、気になるネロリの香りによって期待できる効果・効能について解説していきます。
不安を治める鎮静・抗うつ効果
ネロリの香りは古くから「天然の精神安定剤」と呼ばれるほど、不安や興奮を鎮め、穏やかな心にしてくれる効果があるとされています。
この効果はネロリに含まれる「リナロール」が持つ、強い鎮静作用からくると考えられるでしょう。実際に、リナロールに着目したマウス実験においては、一定の抗不安効果がある(※1)と実証されています。またリナロールだけではなく、抗不安効果があるとされるリモネン(※2)なども含まれているため、精神安定・リラックス効果は高いと考えられます。
なお不安を鎮め、気持ちを落ち着かせるネロリには安眠効果もあるとされます。試験やプレゼン前の緊張を鎮めたり、なかなか寝付けなかったりする際に利用すると効果を感じやすいでしょう。
ネロリの鎮静効果は非常に高く、1度に多量の香りを摂取すると、リラックスしすぎてぼんやりとしてしまう恐れがあります。睡眠前であれば問題はありませんが、運転や精密機器の操作など、一定の緊張感が必要な場面では利用を控えてください。
PMS・更年期障害の緩和
ネロリに含まれる「ネロリドール」という成分には、女性ホルモン様の効果があると判明しています。そのため、女性のPMSや更年期障害を緩和する効果も見込めるのです。
PMSにおいては、一定期間ネロリの香りを摂取した場合と摂取しなかった場合を比べ、PSST質問票(※)の記入結果を確認するなど実際の調査も行われています。結果は香りを摂取した場合のスコアが有意に低くなる(※3)と発表されました。
ネロリのリラックス効果と併せて、PMSを緩和する効果が期待できるのかもしれません。まだ研究途上ではありますが、一定の効果を期待できると考えられるでしょう。
(※)月経前症状チェックシート、計19項目の設問に対してスコアが高いほど月経前症候群(PMS)が重いとされる
肌の再生をサポートする美容効果も
香りの効果というより、ネロリのアロマオイルを用いたスキンケアも有用だとされます。ネロリそのものに関する研究はいまだ途上です。ただ、香り成分の1つである「リモネン」には、高い抗酸化・抗炎症作用が認められているため、肌を健やかに保つ効果が期待できるでしょう。
ネロリオイルをキャリアオイルで薄めたり、精油が含まれているオレンジフラワーウォーターを使ったりすることで、優しい香りに包まれながら肌のお手入れをすることが叶います。
スキンケアの時間をリラックスタイムと考えた場合、鎮静作用も期待できるネロリを用いたお手入れは非常に理にかなった方法といえます。また、ネロリオイルは保湿効果も高く、ハリのある肌を維持できるともいわれるため、妊娠線の予防などにもおすすめです。
ネロリの香りのおすすめの使用&摂取方法
ネロリアロマの豊富な効果を知った後に気になるのは、やはり効果的な使用・摂取方法ではないでしょうか。おすすめの方法は以下の4つです。
- 香りを持ち歩く
- アロマバスで不快リラックス効果を実感
- スキンケアにネロリオイルを活用する
- アロマディフューザーで空間いっぱいに香りを広げる
それぞれ詳しく解説します。
香りを持ち歩く
最も手軽&外出中でもネロリの効果を実感しやすいのは、ハンカチやティッシュにネロリオイルをしみこませておく方法です。ほんの1滴をハンカチにしみこませておくだけで、不安や緊張を感じた際にもすぐに香りを摂取できます。
ゆっくりと深呼吸をすることにもつながるため、より素早く緊張感を治めることができるでしょう。ただ、ハンカチなど布にしみこませた場合、オイルが付いた部分がシミになる恐れがあります。目立たない場所にオイルを含ませる、または専用のハンカチを用意するなどの点も意識してください。
アロマバスで深いリラックス効果を実感
アロマバスも非常に手軽、かつリラックス効果を高いレベルで実感できる方法です。ネロリの香りによるリラックス効果と、湯船につかることで得られるリラックス効果で2重の効果を感じられるでしょう。
アロマバスのやり方は、お湯を張ったバスタブにネロリオイルを数滴たらすだけととても簡単です。湯気に乗って浴室全体に香りを広げてくれるため、呼吸をするたびにネロリのよい香りを堪能できます。
ただ、ネロリの香りは強いため、入れすぎには注意が必要です。1滴ずつ試して、自分にとって心地よい香りの濃度を見つけてください。また、ネロリに含まれるリモネンは、人によって肌刺激の原因になる成分です。肌に赤みがさしたり、ピリピリと刺激を感じたりする場合は使用を控えてください。
スキンケアにネロリオイルを活用する
先述したように、ネロリオイルはスキンケアにも有用です。肌のお手入れをしながら、香りの効果を実感することもできるでしょう。
ネロリオイルをスキンケアに利用する場合は、オイルをそのまま肌に付けないようご注意ください。ホホバオイルやアーモンドオイルなど、肌にじかに付けても問題ないとされるオイルにネロリオイルを数滴プラスする方法が一般的です。スキンケアの仕上げに用いることで、滑らかな肌へと導いてくれるでしょう。
ただし、ネロリオイルに限らず、スキンケアのアイテムは個々人によって相性があります。「成分がよければ万人に使える」というものではないため、少しずつ試してください。
アロマディフューザーで空間いっぱいに香りを広げる
空間いっぱいにネロリの香りを広げたい、香りの効果をもっと効率的に利用したい方におすすめなのはアロマディフューザーを使う方法です。
ネロリの香りを空間いっぱいに広げられるため、お部屋に入った瞬間から香りを堪能することができるでしょう。ルームフレグランスとして・特別なお客様をもてなすため・オフィスの休憩室で気持ちを切り替えるためなど、様々な場面で活用できます。
甘やかでありながら爽やかもある、特徴的なネロリの香りをそのまま堪能するには、アロマディフューザーの中でも「ネブライザー式」がおすすめです。アロマオイルをそのまま微粒子化させ、空間に拡散できるため、濃厚な香りを楽しめるでしょう。
まとめ
今回は希少価値が高く、印象的な香りが記憶に残りやすい「ネロリ」の香りに関してご紹介いたしました。記事のおさらいは以下の通りです。
- ネロリはビターオレンジ(ダイダイ)の花から抽出されるアロマ
- ネロリの効果は沈静・抗うつ・PMS緩和など様々
- アロマバス・スキンケア・アロマディフューザーなど使用方法も多岐にわたる
高い鎮静効果を持つネロリは、ストレス社会といわれる現代人にとって非常に有用な香りです。単純に甘いだけの香りでもないため、万人受けしやすい面も使いやすい香りといえるでしょう。
しかし、上記まででも軽く触れてきたように、ネロリは香りが強く量の加減が難しいアロマです。使い方を間違えれば、思ったような効果を感じられないケースもあるでしょう。また、香りを日常やブランディングに用いることが初めての場合、香りの使い方に戸惑うこともあると感じます。
そのような場合は、香りのプロフェッショナルである弊社にお気軽にご相談ください。香りに期待する効果効能や効果的な取り入れ方まで、ご納得いただけるまで詳しく提案・解説いたします。