香りを楽しみたいと店舗やネットで検索した際、必ずといってよいほど候補に挙がってくる香りが「ムスク」ではないでしょうか。高い人気は現在だけではなく、古くから漢方薬の原料にも使われ、強心剤としての効果や媚薬としての効果があるとされてきました。
世界中で愛されている香りですが実はその効果効能は、まだまだベールに隠されているところが多い香りでもあります。
またローズやシトラスとは異なり、原材料の見当がつきにくいことから、どんな香りなのかと聞かれた際に答えにくい香りでもあるでしょう。そこで本記事では、ムスクとは一体どんな香りなのか、原材料から香りの特徴、期待できる効果効能まで詳しくご紹介します。
- 女性ホルモン分泌促進効果
- 異性を惹きつける効果
ムスクの特徴
そもそもムスクとはどんな材料から作られている香りなのでしょうか?ローズやレモンのように、名前がそのまま原材料となっている香りではないのでよく知らない方も多いと感じます。まずはムスクの歴史や香りの系統、特有の芳香成分などムスクの情報を確認していきましょう。
ムスクの歴史
ムスクの和名は「麝香」といい、本来は「麝香鹿(じゃこうじか)」と呼ばれる小柄な鹿の香嚢(こうのう)から得られる分泌物を指します。オスの麝香鹿にだけある器官であり、メスを呼び寄せるフェロモンの役割や、なわばりを示すためのものです。
そのままの分泌物は、アンモニアなどの動物的な香りで決して良い香りではありません。ただし分泌物を乾燥させ、ごく少量を香料として用いると甘く官能的な香りになることから、古くから香水としても高い人気を誇ってきました。
この官能的な香りを得るために一時期、麝香鹿は乱獲された歴史があり、現在では絶滅危惧種とされています。ワシントン条約等により、麝香鹿の商用目的での取引が禁止されていることから、現在流通しているムスクの香りはそのほとんどが合成香料です。
香りの系統
ムスクの香りを系統で示すと「アニマルノート」「ムスキーノート」になります。アニマルノートは名称の通り、動物由来の香りを指し、ムスキーノートは動物系の中でも麝香鹿の香嚢由来の香りを指します。
どちらも原液は非常に強烈な香りですが、薄めることで甘い香りになったり香りに奥行きを出したりする効果が期待できるものです。また上記でも軽く触れましたが、現在ではほとんどが合成香料なこともあり、一言でムスクといっても様々な種類があります。
大きく分けると「ホワイト系」と「ダーク系」になり、日本国内でメジャーなムスクの香りはホワイト系(甘い香りの石鹸を思わせる少し粉っぽいイメージ)です。
主な芳香成分
ここまで触れてきたように、現在のムスクは合成香料であることがほとんどなので、配合によって自由に芳香成分を加味することが可能です。したがってここでは、天然ムスクに含まれている代表的な芳香成分について触れていきましょう。
麝香鹿から摂れるムスクの代表的な芳香成分は「ムスコン(1)」と呼ばれるものです。動物的な香りでありながら、ごく少量を用いると甘くパウダリーな香りに。麝香鹿の香嚢からしか取れないとされてきましたが、1926年にムスコンの化学構造が解明されたことから、現在では合成香料でもほぼ同じ構造を持つ香りを作り出すことが可能とされています。
(1):15員環の大環状ケトン構造をもつ芳香成分の一つ
ムスクの種類ごとの香り特徴
本来のムスクは麝香鹿から取れる香りを指すと分かりました。しかし現在ではほぼ合成香料なこともあり、ムスクと一言で言っても多様な種類が開発されています。ここでは種類ごとの香りの特徴など見ていきましょう。
ホワイトムスク
ムスク系の香りの中でも最も一般的な香りであり、麝香鹿から摂れる天然ムスクを科学的に作り出した香りとされます。天然ムスクの香りと区別するために「ホワイトムスク」と名付けられたとも言われるので、比較的に天然ムスクに近い香りといえるでしょう。
香りの特徴は甘くパウダリーで温かみがあるとされ、石鹸のような香り、お風呂上がりの香りとも言われます。ちなみに正式な成分名ではなく、通称として用いられる言葉です。
ブラックベリームスク
ムスクの甘さにベリー系の爽やかさや瑞々しさをプラスしたような香り。ベリー系ならではの甘酸っぱさが、少女の天真爛漫な魅力や儚い美しさを演出します。一味違ったムスクの香りを堪能したい方におすすめです。
カシミアムスク
柔らかく滑らかな肌触りを持つ「カシミア」をイメージしたムスクの香り。ホワイトムスクより香りの広がり方が控え目で穏やかな点が大きな特徴です。
ウッディムスク
こちらも名称通り、森や大木を思わせる、どこか爽やかな香りを持つムスクを指します。ホワイトムスクより甘さが控え目なので、男性向けの香水にもよく使われます。他にも甘すぎる香りが苦手な人にもおすすめです。
クリスタルムスク
ムスクを香水として利用する際、最初の15分間で香る「トップノート」と呼ばれるときの香りが控え目なものを指します。香りの広がり方がさりげないので、様々なムスク系の香水で利用されている点も大きな特徴です。
レッドムスク
ホワイトムスクと異なるスパイシーさを持ち、より官能的な香り。暖炉の前にいるような強い温かみを感じる香りとして高い人気を誇りますが、個性が強い香りでもあります。身に付ける場合はごく少量からがおすすめです。
ブルームスク
ムスクの他にシトラス系やフローラル系、ウッド系の香りを配合した使いやすい香りです。爽やかさやフレッシュさの根底に温かみを感じるような、普段使いにも適した香りといえるでしょう。
パウダリームスク
ホワイトムスクのパウダリーな甘さをより強く感じられる香りです。官能的というより高級感を覚える香りなので、身につける以外にも使い勝手がよい点も人気が高い理由の一つ。香水の他にルームフレグランスなどでもよく利用されている香りです。
ムスクの基本情報
学科/科名 | 麝香鹿 / Moschus属 |
---|---|
精油名 | ムスク |
抽出部位 | 香嚢 |
抽出方法 | 香嚢を乾燥後、エタノールでチンキ(天然ムスクの場合) |
香りの強さ | 強め |
ノート | ラスト(ベース) |
注意事項 | 使う量に注意(香り立ちが遅いので、濃く付けすぎる可能性あり) |
(2)アルコールなどに漬けることで濃縮液を作る方法
ムスクの効果と効能
では実際のところ、ムスクの香りにはどのような効果・効能が期待できるのでしょうか?ここからはムスクの効果と効能について解説します。
異性を惹きつける効果?
古くから甘く官能的な香りとされるムスクには、異性を惹きつける効果があるとされてきました。近年の研究では男性や少女より、成熟した大人の女性の方がムスクの香りを感知しやすい(※1)という点が実験で明らかになっています。
また、L-ムスコンを用いた実験では、一定の条件をクリアすることで相手への印象をよくする効果が期待できるのでは(※2)と示唆されています。ムスクによって異性への効果が期待できると、言い切れるわけではありませんが、相手に自身を印象付けることは期待できるかもしれません。
女性ホルモンの分泌を促す効果
ムスクの香りには、女性ホルモンの分泌を促進する効果もあるとされています。実際に行われた実験で唾液中の成分を調べたところ、テストステロン(3)や 17β- エストラジオール(4)の濃度が高まる(※3)ことが示されました。
女性ホルモンだけではありませんが、女性の体になにがしかの作用があると考えられています。
(3)体内で生成される代表的な男性ホルモン
(4)主に卵巣で作られるとされる女性ホルモン
ムスクの香りのおすすめの使用&摂取方法
甘く柔らかなムスクの香りを、実際に摂取するにはどのような方法があるのでしょうか?シーンによって使い分けてほしい2つの方法をご紹介します。
いつも身近に「香水」
ムスクの香りをいつも身近に感じたいのであれば、おすすめは気軽に使用できる香水の利用がおすすめです。甘く温かみを感じさせる香りなので、春や夏など汗ばむ季節はごく軽く、秋口から冬の間は通常通りに利用すると重たくなりすぎずに香りをまとうことができます。
空間一杯に香りを満たす「アロマディフューザー」
甘く官能的なだけではなく、温かみを感じさせるムスクは、アロマディフューザーで空間一杯に香りを満たす方法もおすすめです。優しくうっとりするような香りは、お部屋や大きな空間でのくつろぎタイムにもピッタリです。
しかしムスクは香りが強めなので、強く香らせすぎすると人によっては不快に感じることもあります。キャンドルやアロマスプレーより、香りの濃さを調整しやすいアロマディフューザーの利用がおすすめだといえるでしょう。
まとめ
- ムスクの香りは本来「麝香鹿」の香嚢から作られていていたものだが、現在はほぼ合成香料
- ムスクの香りの主な芳香成分は「ムスコン」
- 期待できる効果効能は「異性を惹きつける効果」「女性ホルモンの分泌促進」
以上のことをご紹介してきました。世界中で愛される香りの一つ、ムスクの魅力や思っていた以上の種類に驚かれ方も多いのではないでしょうか。しかしムスクは身近な香りでありながら、心地よく使うには少しコツが必要な濃厚な香りです。
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