アロマテラピーとは、植物から抽出される精油(エッセンシャルオイル)を用いた自然療法を指します。香りの摂取を始めとして、オイルを肌に塗布して行うマッサージなどが代表的な方法だといえるでしょう。
リラックス&リフレッシュ効果のように気分に働きかけるだけではなく、発がん性物質の抑制(1)など医療でも活用が期待されています。本記事ではアロマテラピーの定義から効果が期待できる仕組み、活用方法までご紹介します。
アロマテラピーとは?
香りの効果が知られたことから、現在では様々な場面でアロマテラピーの言葉を聞くようになりました。しかしアロマテラピーとは何か?と聞かれて明確に答えられる人はまだまだ少ないでしょう。そこでまずは、アロマテラピーの定義について確認していきましょう。
アロマテラピーの定義
現在の日本でのアロマテラピーの定義は、AEAJ(公益社団法人日本アロマ環境協会)が、以下のように定めています。
”アロマテラピーは、植物から抽出した香り成分である「精油(エッセンシャルオイル)」を使って、美と健康に役立てていく自然療法です“
アロマテラピーという言葉が生まれる前、有史以前から精油に一定の効果が期待できることは知られていました。そんな精油を用いた自然療法をアロマテラピーと名付けたのは、フランスの科学者「ルネ=モーリス・ガットフォセ」です。
元は「アロマ(芳香)」と「テラピー(療法)」を合わせた造語でしたが、のちにアロマテラピーと名付けられた本を執筆。言葉そのものが広く使われ出し、現在でいうアロマテラピーの言葉が定着したのです。
アロマテラピーの目的
アロマテラピーを行う目的もまた、AEAJ(公益社団法人日本アロマ環境協会)が考えているものとして、以下のものがあります。
- 心と身体のリラックスやリフレッシュを促す
- 心と身体の健康を保ち、豊かな毎日を過ごす
- 心と身体のバランスを整え、本来の美しさを引き出す
植物から抽出される精油を用い、心と体のバランスを整えることが一義だと考えられるでしょう。
アロマテラピーの効果とその仕組み
ではアロマテラピーが効果を発揮する仕組みは、どのようになっているのでしょうか?香り成分は鼻の中に入ると「嗅上皮(きゅうじょうひ)」と呼ばれる粘膜に付着。匂いを検知するセンサーである嗅上皮から、香り成分は電気的刺激に変換され脳に届きます。
電気刺激に変換された香り成分は、脳の中でも「大脳辺縁系」やその下にある視床下部に直接届く点が大きな特徴。そこで香り成分に含まれる特定の効果を持った成分が、体温やホルモンの分泌、免疫力を調整しているのではと考えられています。
そもそも匂いを感じる嗅覚は、人が持つ五感の中でも特に原始的な感覚の一つです。視覚や味覚とは脳に伝わるシステムが異なり、五感の中で唯一「大脳辺縁系」にダイレクトに作用するのが嗅覚だといわれています。「香りは脳に直接届く」と考えると、アロマテラピーの有用性もより高く感じられるのではないでしょうか。
【症状別】アロマテラピーの精油効果を紹介
ここからは実際に、アロマテラピーで期待できる精油の効果を見ていきましょう。香りをうまく空間に取り入れることで、作業効率や集客率アップも夢ではありません。
集中力を高めたい
勉強や仕事中など集中力が途切れてきたときによいとされる香りが「ユーカリ」「ローズマリー」「ペパーミント」「レモン」などです。どれも交感神経を優位にすることで体や精神の活発化をうながし、集中しやすくなるようコンディションを整えてくれるとされています。
またローズマリーは記憶力を高める効果がある(2)と期待されている香り。学習中や勤務中のオフィスでの使用がおすすめです。
リラックス&リフレッシュしたい
気分が落ち込んだときや疲れがたまっているときなど、心を軽くしてくれる香り(3)が「ラベンダー」「ジャスミン」「オレンジスイート」「グレープフルーツ」など。
ラベンダーとジャスミンはリラックス、オレンジスイートとグレープフルーツは落ち込んだ気分を前向きにするサポート効果が期待できます。
眠れない・寝つきが悪い
疲れているはずなのに眠れない、または眠りが浅くて眠った気がしない。こんなときによいとされている香りが「ネロリ」「ベルガモット」「イランイラン」「ラベンダー」など。
どれも鎮静効果を持つ香り(3)とされ、医療や福祉の世界でも活用されることが多くなっています。ただしイランイランは香りが強めなので、使用前に好みに合うか確認してください。
風邪・感染症予防
精油には、気分のリラックスやリフレッシュ以外に実際の感染症予防にも効果があるとされています。代表的な香りは「ティートゥリー(4)」「ペパーミント」「ユーカリ」「レモン」などが挙げられます。
どれも抗菌作用がある芳香成分を含んだ香り(5)なので、ディフューザーで空間に香りを漂わせる方法、または芳香浴がおすすめです。
生活にアロマテラピーを取り入れる方法
様々な種類の香りに豊富な効果を、実際に生活に取り入れるにはどうすればよいのでしょうか?スペシャルケアから日常的な活用方法までご紹介します。
お風呂でリラックス「アロマバス」
効率的にリフレッシュしたい、忙しくてなかなか香りを楽しめない。こんなときにおすすめなのが、無水エタノールに混ぜた精油を湯船に垂らすだけの、アロマバスの利用です。
精油とエタノールの準備をしておけば、いつでも思い立ったときに利用が可能。ただし精油には皮膚刺激が強いものもあるので、初めは部分浴(手足だけなど)から始めましょう。
空間一杯の香りを「ディフューザー」
特に意識することなく、日常的に香りの効果を実感したいならディフューザーの活用がおすすめです。手軽に利用できる点はもちろん、ディフューザーを選べばごく一部に香りを漂わせることから、広い空間での活用までニーズに合わせて選べます。
部屋に入った瞬間から香りを摂取できるので、お客様を迎える空間での活用もおすすめです。
スペシャルなケアを「アロママッサージ」
精油をキャリアオイルで薄め、肌に直接塗布しながらマッサージをするケア。精油の種類を選ぶことで、リラックス効果からむくみ改善まで幅広い効果を実感できるでしょう。
ただし後片付けが少し大変なこと、精油の扱いが難しいのでプロにお任せしたい活用法でもあります。
アロマテラピーを使用する上での注意点
様々な効果に豊富な活用法があるアロマテラピーですが、メリットを受け取るためには注意点もきちんと把握しておかなければいけません。ここからは、アロマテラピーを利用する上で知っておきたい注意点についてご紹介します。
精油を直接肌に付けない
何度か軽く触れてきましたが、精油の原液は皮膚刺激が強いものも含まれます。直に肌に精油が付いた状態で紫外線に当たると、やけどのような症状が出る可能性もあるので、もし肌についた場合は大量の水でしっかり洗い流しましょう。
また布についた場合も、精油の色が写ってしまう可能性があります。汚れてもよい布や使い捨てができるティッシュなど、すぐに拭きとれるよう準備しておきましょう。
口・目に入れない
抗菌成分があるからと、たとえ水で薄めていたとしても、うがい薬のように使うこともおすすめできません。目薬代わりの利用も不可なので、基本的に精油は香りを楽しむものとして利用してください。
医師にかかっている人は事前に相談を
確かな効果があるということは、裏を返せば病気や薬との相性が悪い可能性も考えられます。したがって現在、病気などで医師にかかっている、また妊娠中の場合はかかりつけのお医者様に利用の可否を事前に相談してください。
健康な人でも、そのときの状況によって精油の香りを受け付けないことがあります。精油が持つ効果・効能を正しく利用するためにも、異変を感じた場合は利用を中止する判断が大切です。
ペットがいる場合の注意点
人間以外の動物の中には、特定の香りを忌避するケースがまま見られます。大切なペットの健康を害することが無いよう、ペットの種類によって利用を避けたほうがよい香りを確認しておきましょう。
アロマテラピーのQ&A
最後にアロマテラピーに関する疑問点についてご紹介します。精油を利用する際に必要な知識から豆知識まで、ちょっとした疑問を解消していきましょう。
精油の保管方法は?
植物から抽出された、100%天然の精油は採取された時点から酸化が進みます。よって保管時は空気・紫外線・温度・湿度の4つに気を付けましょう。
しっかりと蓋を閉めて空気に触れる面積を最小限にする、紫外線、温度、湿度の対策として冷暗所での保管が基本です。冷暗所というと冷蔵庫を思いつきがちですが、頻繁に扉を開け閉めする冷蔵庫は実はあまり保管場所に向いていません。
できるだけ温度の変化が少ない場所に置き、開封後は早めに使い切るというやり方が一番でしょう。冷蔵庫に保管する場合は、使った後はすぐに冷蔵庫に戻し、温度変化を少なくしてください。
精油は火気厳禁?
精油は名前の通り油なので火気厳禁です。キッチンで保管する場合は、火元に気を付けて利用しましょう。
アロマセラピーとアロマテラピーの違いは?
アロマテラピーという名前を聞くのと同じように、「アロマセラピー」と呼ばれているところを見た方も多いでしょう。結果から言ってしまうと、両者の意味する内容に違いはありません。
どちらも外国から言葉が入ってきたときに当てられた「読み」が異なるのです。一般的にはフランス語読みをアロマテラピー、英語読みをアロマセラピーとされています。
まとめ
- アロマテラピーの定義は「植物から抽出された香り成分を用いて、美と健康に役立てる自然療法」
- アロマテラピーの効果はリラックス効果から風邪予防まで幅広い
- アロマテラピーを生活に取り入れるには、アロマバス、ディフューザー、マッサージなど
- 精油の原液は刺激がきついものも多いので、取り扱いには要注意
アロマテラピーに関して、定義から効果効能、活用方法に注意点までご紹介しました。実に有史以前から香りを用いた療法があったという点には、驚いた方も多いのではないでしょうか。
嗅覚に訴え、ダイレクトに感情を揺さぶる香りにはまだまだたくさんの活用法があります。もっと香りの効能を経営や仕事に役立てたいとお考えの場合は、ぜひ弊社にお気軽にご相談ください。
上質な香りの提供からニオイ問題の解決まで、様々なご相談をお待ちしております。
参考文献
(1)https://www.jstage.jst.go.jp/article/aeaj/17/1/17_170106/_pdf/-char/ja
(2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjske/13/1/13_45/_pdf
(3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/39/4/39_4_221/_pdf/-char/ja
(4)https://www.jstage.jst.go.jp/article/imj/13/2/13_94/_pdf/-char/ja
(5)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/43/2/43_2_109/_pdf