【脱臭ガイド】飲食店のにおい対策を徹底解説!
環境省の大気生活環境局によると、最近の悪臭苦情は飲食店やサービス業に対するものが増加傾向にあります。
また、ゴミや汚水による悪臭だけでなく、一般的には美味しそうと感じる調理臭までがクレーム対象になっているのも特徴です。
これからの飲食店は、こういった悪臭苦情の変化に対応していかなければなりません。いったいどのような対策をとれば良いのでしょうか。
そこで今回は、設計会社の担当者(建築サイド)、飲食店のオーナー(施主サイド)それぞれに向けて、におい対策の方法を解説します。飲食店を設計する方、飲食店事業者の方は、ぜひお役立てください。
目次目次を閉じる
飲食店を設計する方、事業者の方向けに法律規制・適した脱臭装置など、お役立ち情報をご紹介。
臭気の原因と対策の進め方とは?
1.飲食店のにおい対策は設計会社・飲食店事業者で異なる
飲食店のにおい対策を行うタイミングは「店舗の設計段階」と「店舗のオープン後」があり、どちらで行うかによって方法や手順が異なります。
設計会社や施工会社の担当者は店舗の設計段階に、飲食店オーナーは店舗オープン後に臭気対策を考えることが多いのではないでしょうか。
設計段階の主な対策は、周辺の環境や法規制、脱臭装置の設置条件の調査、想定される悪臭原因に適した脱臭方法・装置の選定などの事前準備。
一方、オープン後の対策としては、すでに発生しているにおいの原因究明と改善方法を模索することが中心です。
本コラムでは2章で設計担当者様、3章で飲食店事業者様に向けて、飲食店で取り組むべきにおい対策の方法をご紹介していきます。
設計担当者様向けにおい対策の進め方とは?
2.【設計担当者様向け】飲食店におい対策ガイド
調理臭の発生が避けられない飲食店では、においを外に漏らさないために設計段階の対策が非常に重要です。後でクレームにならように基本のにおい対策を押さえておきましょう。
飲食店や商業ビル建設時のにおい対策の進め方~3ステップで解説~
設計担当として飲食店設計時ににおい対策を考えるときの進め方
- 周辺環境や法規制などの事前調査をする【ステップ1】
- 適切な臭気低減目標を設定する【ステップ2】
- 脱臭装置を選定する【ステップ3】
まず周辺環境やエリアの法規制、想定される臭気発生箇所などを調査し、次に調査結果をふまえて、目指す臭気指数の低減目標を設定します。最後にメーカーの技術力やコスト、メンテナンス性などを考慮しつつ、低減目標を達成できる脱臭装置を選定しましょう。
それでは、各ステップを詳しく見ていきます。
まずは周辺環境や法規制などの事前調査をする【ステップ1】
建設予定地の周辺環境、法規制、制約条件などに関する項目は飲食店のにおい対策に欠かせません。以下の項目を確認しましょう。
【法規制に関する項目】
・臭気発生源から敷地境界、住宅地までの距離
・周辺建物の高さ、排気口の高さ
・予想される臭気濃度や臭気指数
・悪臭防止法による臭気指数規制の有無
・建設予定地の区域の区分
・臭気対策に関連する他法令(条例)
【仕様に関する項目】
・予想される臭気発生源(飲食店の種類)や発生条件(排気風量など)
・脱臭装置を設置する場所の条件(スペースや高さ・重さ制限)
・ユーティリティ設備による制約
・耐塩害仕様の必要性
設計段階におけるこれらの情報収集は臭気対策の専門知識がないと難しいため、臭気判定士に協力を仰ぐか同規模施設の情報を引用するとスムーズです。
適切な臭気低減目標を設定する【ステップ2】
ステップ1の事前調査結果をもとに、法規制等を遵守し、周辺住民へも配慮した臭気低減目標を設定します。
過剰なリスクヘッジにより目標が厳しすぎると、初期投資や運転・維持管理に多くの費用がかかりますが、目標値を下げすぎると竣工後に思わぬ臭気トラブルが起き、テナントの信用を失いかねません。
臭気低減目標もプロである臭気判定士や脱臭装置メーカーに相談する、または類似案件を参照して設定すると安心です。
見積もりをとって脱臭装置を選定する【ステップ3】
周辺環境や発生源の調査結果、臭気低減目標をもとに以下の流れで、脱臭装置を選定します。
脱臭方式を選ぶ
脱臭方式は大きく分けて8種類ありますが、厨房排気臭や食品のにおいに強い脱臭法は「吸着法」と「酸素クラスターイオン方式」の2つです。
「洗浄法」を導入する飲食店もありますが、維持管理の手間やコストが大きいため、基本的には、厨房排気臭→吸着法(フィルター)、店内に立ち込めるにおい→酸素クラスターイオン方式がおすすめといえます。
より詳しい脱臭方式の解説やおすすめの脱臭装置については3章【ステップ4】へ
脱臭装置メーカーから見積もり・設計提案書を取る
先程紹介した脱臭方式に強いメーカーへ見積もりと、必要に応じて設計提案書を依頼します。事前調査の結果や設置条件、周辺環境条件をもとに臭気シミュレーションを実施してみましょう。
環境省のHPで案内されている「においシミュレーター(臭気指数規制第2号基準算定ソフト)」を利用するのも1つの方法です。
ステップ1で調査した項目(排気風量・排出口の高さ・建物から敷地境界線までの距離)や大気による希釈度等の諸条件に対
し、厨房排気臭の想定臭気濃度を設定することにより、実態に近しいシミュレーションが可能です。
HPでは、においシミュレーターの基本操作方法についても紹介されています。ただし、このソフトウェアには専門用語が各所に使用されており、使い慣れていないとやや難解な側面もあります。
また、発生源として想定すべき臭気濃度、臭気指数がどの程度なのか、実績や経験の多い臭気判定士や脱臭装置メーカーに相談すると安心です。
メーカーを選定する
見積もりと設計提案書の内容などから脱臭装置メーカーを選びます。費用はもちろん臭気の専門知識や技術力、飲食店への納入実績、メンテナンス対応の有無なども選定のポイントになります。
飲食店のにおい対策を考えるときに注意したいポイント
最後に、設計担当者がレストランや食品工場のにおい対策を行うときに注意したい3つのポイントについてご説明します。
注意したいポイント
- 脱臭装置は建設前に設計図面に盛り込む
- メンテナンス性を考慮する
- 悪臭防止法をクリアしても安心しない
脱臭装置は建設前に設計図面に盛り込む
完成済みの施設への脱臭装置の設置には様々な制約が入ります。特注の装置が必要になりコストがかさむ例や、設置スペースがなく脱臭装置対策ができないケースもあり得ます。におい対策は軽視せず、設計段階で検討することが重要です。
メンテナンス性を考慮する
脱臭装置はメンテナンス性も忘れてはいけません。安価すぎる装置は性能不足や維持管理の難しさがよく聞かれます。
十分な効果を得られず、想定以上のランニングコストがかかることも珍しくありません。後々のトラブルを避けるためにも長期的な目線で選びましょう。
悪臭防止法をクリアしても安心しない
悪臭防止法における臭気指数規制値をクリアする脱臭装置を設置しても、迷惑防止条例による指導が入る可能性は残っています。目標設定は周辺環境や事例もみて慎重に行いましょう。
飲食店オーナー様/食品工場担当者様向けにおい対策の進め方とは?
3.【飲食店事業者様/食品工場担当者様向け】飲食店におい対策ガイド
ここからは、飲食店をオープンした後から取り組めるにおい対策について解説します。食品加工工場の対策にもなりますので合わせてご覧ください。
飲食店のにおい対策の進め方~4ステップで解説~
ひとくちに「におい対策」と言っても、においの原因や周辺環境、お店の種類によってその内容は変わります。しっかりと効果を得るためには段階を踏んで対策することが大切です。
飲食店のにおい対策は、以下の4つのステップで行いましょう。
- においの発生源と強さを確認する【ステップ1】
- 規制を理解する【ステップ2】
- においを絶つ・薄める対策を行う【ステップ3】
- 脱臭装置を設置する【ステップ4】
まずは、においの原因となる場所と強さ、地域の悪臭防止法の規制基準を守れているか確認します。そのあとに適した方法を選定して徐々に実践していきます。
こうすることで、対策すべき個所や必要な消臭努力の程度が分かり、無駄なく効果的な対策が行えます。各ステップを詳しくみていきましょう。
飲食店のにおいの原因は?発生源をつきとめる【ステップ1】
ステップ1は、においの発生源と強さの確認です。店の中や周囲をまわって、においを感じたらチェックします。飲食店の悪臭3大発生源「排気・排水・ゴミ」は確実に押さえましょう。
厨房排気
環境省の「飲食業の方のための臭気対策マニュアル」のデータによると、飲食店のにおいの発生源は60%が厨房排気。風に乗って漂うため、少し離れた住宅エリアからの苦情も出やすい傾向があります。
排水関係
次に多いのが排水です。飲食店業では20%、食品製造業の分野では47%を占める発生源であり、下水に乗って悪臭を近隣に広げます。側溝、浄化槽、グリストラップ、ビルピットなどの汚れが主な原因です。
ゴミ置き場
生ごみが避けられない飲食店は当然、ゴミの悪臭に対する苦情も多く寄せられます。放置した生ごみの腐臭、ゴミ箱やゴミ置き場の汚れが原因になります。隣近所や店の前を通行する人々に悪い印象を与えます。
においチェックをする際は、スタッフは鼻が慣れているので2~3人で確認し、少しでもにおいを感じたら対策箇所に指定しましょう。また、風向きや周辺の建物事情などにより苦情エリアが変化することもあるので、臭気判定士などの専門家に相談するのもおすすめです。
飲食店のある自治体の臭気規制基準を確認する【ステップ2】
飲食店から発生するにおいは、悪臭防止法の「工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭」の規制対象となります。
悪臭防止法には、特定悪臭物質濃度規制と臭気指数規制の2種類がありますが、各自治体で規制内容は異なるので所属する地域の内容を確認しましょう。
例えば、札幌市では臭気指数規制を採用しており、敷地境界では臭気指数10、排気では排気口の高さにより臭気指数を決定、排水は臭気指数26と具体的に設定しています。
また、自治体によっては、悪臭苦情に基づき行政指導や勧告を受けた場合に、規制値をクリアするだけなく「人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれがない程度」の臭気低減対策が求められます。
においを絶つ・薄める!飲食店でできる6つの臭気対策【ステップ3】
発生源と規制基準が確認できたら、原因箇所に合わせて対策を行います。調理工程や清掃、設備の使い方などを見直して、においを絶つ・薄める工夫をしましょう。
強いにおいを発する調理工程を見直す
強いにおいが出る調理工程は、苦情の出にくい時間帯にまとめて実施する。あるいは毎日の仕込みを週2~3日にまとめて行うなど、においが発生する時間や回数を減らすのが効果的です。
排気ダクトを清掃する
ダクト内やファンが油煙などで汚れていると、排気時に強いにおいを発し、外壁を汚す原因にもなります。油煙の汚れはしつこいので、定期的に清掃することが大切です。
排気口の高さ・向きを調節する
排気は近接住宅や近隣ビルの吸気口に向かないように、拡散させることを意識しましょう。排気ダクトはなるべく高く、排気口はにおいの希釈効果が最も高い「上向き」が基本です。
出入口や窓を閉める
窓や出入口からのにおい漏れも多く報告されています。作業中は窓やドアを閉める、においが発生する作業は別の個室で行うなど、発生源を密閉する工夫が必要です。
排水溝やグリストラップを清掃する
排水溝のバスケットは毎日ゴミを捨て、洗う。グリストラップに浮上している油は週1回清掃し、沈殿しているヘドロ除去は月1回が基本。側溝まで丁寧に清掃しましょう。
ゴミは密閉し、低温で保管する
ゴミは腐敗を防ぐため密閉容器に入れて、低温の場所で保管期間を短くするのがコツ。夏場は特に温度に注意しましょう。汚れた段ボールも同様にすると悪臭の発生が抑えられます。
脱臭装置を設置する【ステップ4】
作業工程や設備の見直しを行っても悪臭が改善されない場合は、脱臭装置を導入しましょう。すでに設置していても、原因に適さない機種やメンテナンスが不十分な場合は、能力を十分に発揮できません。発生源とメンテナンス性をみて最適なものを選びましょう。
脱臭装置の種類
飲食店で導入される脱臭装置は、におい除去のメカニズムによって8種類に分類されます。
・電気やガスの熱で酸化脱臭する「燃焼法」
・活性炭やセラミックでにおい成分を吸着する「吸着法」
・水や特殊な薬剤でにおい成分と接触させ、化学反応によりにおいを除去する「洗浄法」
・腐葉土などのバイオで分解する「生物脱臭法」
・特殊フィルターに紫外線を照射して急速に酸化分解させる「光触媒脱臭法」
・酸化力が強いオゾンガスで分解させる「オゾン脱臭法」
・安全性の高い酸素分子塊で酸化分解する「酸素クラスターイオン方式(プラズマ除去法)」
・家庭用芳香剤に代表されるように、他のにおいをかぶせてにおいを覆い隠す「マスキング法」
この中で多くの厨房で採用されているのが、排気臭に強い「吸着法」、手軽な「洗浄法」、空間消臭に有効な「酸素クラスターイオン方式」です。具体的な内容をみてみましょう。
吸着法は維持管理が簡単【ゼオガイア】
「ゼオガイア」は、2021年7月現在累計納入枚数 26,000枚を超える信頼性の高い厨房排気用セラミックフィルター装置です。排気ダクトに設置したフィルターに、においを吸着させて消臭します。フィルター方式は、臭気成分との接触率が高く、小風量から大風量までの排気風量に対して、変わらず高い効果を発揮します。
また、吸着剤となるセラミックは下水などの消臭に使用される活性炭とは違い、不燃素材というのもポイント。ゼオガイアは発熱性試験(ISO5660-1)をクリアしている為、火気が多い厨房でも安心です。さらに、新たな配管工事・計装工事・電気工事の必要がなく、メンテナンス頻度が少ないという利点もあります。
性能アップでさらに軽量化!2022年1月、改良型をリリースしました。
設計への組み込みやすさ第一に、コンパクトさ・性能の高さ・メンテナンスのしやすさを追求した排気用フィルター。累計納入枚数は 27,000枚(※)を超えます。
厨房・料理臭専用に開発されたため高い脱臭効果を有し、飲食店・商業複合施設のみならず、食品製造工場の排気対策などにも導入される確かな脱臭装置です。
(※)2021.7末時点
洗浄法(スプレータイプ)は安価に始められる
洗浄法は薬液と臭気成分を接触させて化学反応によりにおいを除去する方法です。
脱臭装置本体の大きさが比較的コンパクトで、安価に始められることから近年人気の高い脱臭装置のひとつですが、液体を使用するため配管工事やメンテの手間がかかります。香り付けにより効果を出す消臭剤(フィトンチッドなど)は「マスキング法」にも分類され、その消臭剤のにおいが近隣苦情の原因となるケースがかなり多いため、あまりおすすめできません。
また上記、液体配管や香りによる苦情発生のデメリットを回避したスプレー装置については、そもそも排気される臭気成分量に対して消臭剤噴霧量(消臭分子量)が圧倒的に少なく、化学原理的に十分な脱臭効果が期待できない装置である可能性があります。
デメリットも多いため、低コストだからと安易に導入せず、十分に検討してください。
酸素クラスターイオン方式は除菌にも有効【レビオン】
「レビオン」は空間内のにおいを高電圧放電による酸化力で分解する、酸素クラスターイオン方式の消臭機器です。
※企業によっては、酸素クラスターイオン方式をプラズマ脱臭法と呼ぶ場合があります。
飲食店舗の窓や出入り口から漏れる臭気対策や、店内の悪臭除去に最適です。
同じように空間消臭に利用される「オゾン脱臭法」ではオゾン濃度によって、のどの痛みなど人体に影響を及ぼす危険性がありますが、レビオンは有害な高濃度オゾンを使用しないため、客席など人がいる空間でも安全に利用できます。
複合施設内のテナント間のにおい漏れ対策などでも、よく活用されています。また、除菌効果もあるため感染予防対策としても有効です。
圧倒的な納入実績を誇る酸素クラスター除菌脱臭装置【レビオン】。
マイクロプラズマ放電により生成された大量の酸素クラスターイオンが、菌・ウイルス・悪臭物質などを除菌・消臭します。
人体に有害なオゾンに代わり、室内有人空間で安全に使用可能です。
4.まとめ
飲食店のにおい対策は、設計段階とオープン後で方法が異なります。
設計段階では、まず周辺環境や地域条例などの事前調査を行い、それに沿った臭気低減目標を設定。目標と想定される悪臭原因に適した脱臭装置を選び設置します。一方、オープン後に取り組む場合は、まずにおいの発生源を特定し、臭気規制基準に適合しているか確認します。そして、においを絶つ・薄める工夫を行います。
脱臭装置の導入を考えるのであれば、店舗完成後は設置条件が厳しくなるため、できれば設計段階から取り組むのがおすすめです。また、におい対策は専門知識を必要とすることも多いため、臭気判定士や脱臭装置メーカーなどのプロに相談すると良いでしょう。