悪臭防止法・悪臭規制の解説《飲食店/厨房排気 編》
(作成日 2022.4.1)
建築物で発生するニオイは、悪臭防止法の適用対象となります。
ニオイを公害と定義し、法律で規制する「悪臭防止法」では、
悪臭を排出するすべての事業所が対象とされているからです。
このページでは、特に、建築設計・設備に関わるご担当者の方に向けて、
ニオイ苦情トップの「厨房排気・飲食店における臭気問題」に的を絞って、
悪臭防止法の説明と、設計時・脱臭対策時の注意点について紹介します。
ぜひご参考にしていただければと思います。
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臭気判定士が正しく解説!
1.悪臭の法的規制「悪臭防止法」とは
悪臭防止法は、昭和47年に環境省により制定された国の法律です。
「悪臭」は環境基本法 第2条で定める「公害」(いわゆる典型七公害)
厨房排気臭を要因とした飲食業への悪臭苦情は、2019年度で669件あり、うち185件で行政の立入検査が行われました。
行政へ寄せられた苦情の中で、飲食店はダントツのトップです(業種別)。
(「令和元年度(平成31年度)悪臭防止法施行状況調査報告書」データより)
① 法規制の対象
悪臭防止法は、規制地域内の工場・事業場の事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行うこと等により生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としており、ビル・公共施設などを含む全ての事業所が対象になります。
【参考】環境省:「悪臭防止法パンフレット」
② 規制方法
国が悪臭防止法として定めている規制の他に、各地方自治体が独自で定めているものもあり、地方自治体独自で規制を定めている場合にはそちらに準ずる必要があります。
■ 悪臭の規制方法 ■
国【悪臭防止法】x 地方自治体【(独自の規制基準を設定した)条例等】
③ 規制基準
現在の法律では、臭気の管理濃度の基準値として、臭気指数による規制基準と特定悪臭22物質の各単ガス濃度で規制基準を設ける2通りの方法があり、自治体によりどちらか一方もしくは両方とも遵守する事が求められます。
また、事業所の用途地域(第一種区域・第二種区域・第三種区域)ごとに基準値が定められています。
■ 規制基準 ■
臭気指数 or/and 特定悪臭22物質の濃度
どちらの基準が適用されるかは自治体ごとに設定されていますので、ご自身の事業所の所在する自治体にて確認する必要がります。
情報は、各自治体のホームページ等で入手することができます。
④ 規制がかかる場所
悪臭防止法で規制対象となるのは下記の3箇所です。
※引用元:下関市HP
規制の場所 | 規制区分 | 規制の内容 |
地境界線上 | 1号基準 | 敷地境界線での管理濃度。規制値が明確な数字で定められています。 |
排気口 | 2号基準 | 排出口における管理濃度。明確な数字で定められている場合もあるが、臭気指数は敷地境界の規制値から算出する必要がある。そのため、シミュレーションソフト(臭気指数)、排ガス流量計算(特定悪臭22物質)を用いて計算する場合が多い。 |
排出水 | 3号基準 | 排出の臭気の強さに関わる基準。基準値は1号基準+16。 |
敷地境界(1号基準)は規制値がいくつと定められており、排出水(3号基準)は敷地境界の基準値+16と明確ですが、排気口(2号基準)は規制値を求めるための計算が必要となります。
そのため、シミュレーションソフトや排ガス流量計算を用いて計算します。
臭気指数の計算については、こちらで解説していますのでご参考になさってください。
⑤ 悪臭防止法を順守しない場合
多くの場合、事業所で対策が必要となるのは、行政からの働きかけがあってからです。
行政措置は、一般的に以下のフローで行われます。
【改善勧告】→ 1年 →【改善命令】→ 1年 →【罰金、営業停止】など
設計時における留意点ってなに?!
2.建築設計における規制対応のポイント
厨房排気臭対策では、敷地境界上・排気口地点において規制基準値をクリアする脱臭目標値を設定する必要があります。
① 当該地域の規制基準値との適合(法的観点)
臭気指数による規制基準と特定悪臭22物質、どちらの基準が適用されるかは自治体ごとに設定されていますので、所在する事業所の自治体にて確認する必要があります。
東京都の場合、敷地境界においては、第一種区域の場合は臭気指数10、第二種区域の場合は臭気指数12、第三種区域の場合は臭気指数13まで、排出口においても、所定の臭気指数まで臭気レベルを低減させるための対策が義務づけられています。
【参考】東京都における悪臭規制基準(臭気指数による規制)
一方、排出口での規制値は、シミュレーションや排ガス流量計算を用いて、排出口の値を設定します。
「敷地境界線の基準を守るため」の排出口での許容臭気レベルが規制値であるということです。
② 当該建物特性から見た適切な脱臭目標値の設定(苦情対策的観点)
悪臭規制値をクリアしていても近隣から苦情が発生してしまう場合もあります。
苦情主(地域住民)にとっては、規制値のクリアではなく「不快なニオイを除去すること」が要望であるためで、そして行政もまた、悪臭が典型7公害の1つとして位置づけられている以上、住民の苦情申請に対応する必要があります。
また、同一敷地内でのOAを介した厨房排気のまわり込みや、上層住居エリアへのまわり込み等による苦情の可能性についても配慮しなければなりません。
同一敷地内からの臭気苦情の場合は、
こういった事態を回避するために、設計段階において臭気苦情発生源の想定と臭気の影響度、臭気の拡散シミュレーションが欠かせませんが、難しいとされるのは、実際に排出されるにおいの強さや周辺環境の状況が把握できないことです。
カルモアでは、厨房排気臭の強さや排出場所の高さなどから、悪臭苦情が発生しないためにはどのレベルにまで臭気を低減する必要があるのか、適切な脱臭目標値を算出し、竣工後の臭気苦情や過剰な設備投資を回避します。
厨房排気対策における導入実績が多いため(厨房排気用脱臭フィルター・ゼオガイア累計納入枚数27,000枚/2021.7時点)、多くのケースでは過去の事例から適切な設計をご提案できますが、場合によっては臭気拡散シミュレーション(カルモア独自開発ソフト・カルモス)を活用して失敗のない設計をご提案します。
また、予算に制限のある場合などには、設計段階では設置スペースのみを確保しておき、苦情が発生したら即座に脱臭装置を導入する、というご対応も行います。
設計段階から脱臭装置の仕様を算出してスペースを確保するため、導入が非常にスムーズです。
苦情が発生してしてから初めて脱臭装置を検討すると、限られた設備スペースにより導入が難しいこともすくなくありません。
装置導入するしないに関わらず、設計段階からニオイ対策を検討することは、結果的にオーナー様のコストダウンにつながります。
昨今の悪臭苦情では、SNSなどを利用した風評被害から思わぬ形で企業ブランドに傷がつき事業継続が困難になることも考えられるため、ニオイ対策には慎重な対応が求められます。
失敗しない脱臭装置はどれ?!
3.厨房排気の対策方式は?【比較表】で検討
以下は、セラミックフィルター式、消臭剤噴霧式、光触媒式など、代表的な厨房排気脱臭方式の比較表です。
厨房排気の苦情件数の増加を考えれば、実績が高く信頼性ある装置を選ぶべきでしょう。
脱臭対策30年のカルモアでは、厨房排気対策には「セラミックフィルター方式」をお勧めしています。
また、カルモアの厨房排気用セラミックフィルターゼオガイア脱臭装置は、他社製のセラミック系脱臭フィルターと比較すると、以下優位性が挙げられます。
-
- 設計のしやすさ(コンパクト・軽量・低圧損)
- 脱臭性能の高さ
- 性能持続力によるランニングコストの低さ
- メンテナンスのしやすさ
臭気苦情抑制率99.1%(※)、納入後に臭気苦情が発生するケースが極めて少ない脱臭装置です。
ぜひご検討の選択肢にお願いいたします。 (※稼働半年後までに臭気苦情が発生しなかった件数の割合。2020.10時点。)
性能アップでさらに軽量化!2022年1月、改良型をリリースしました。
設計への組み込みやすさ第一に、コンパクトさ・性能の高さ・メンテナンスのしやすさを追求した排気用フィルター。累計納入枚数は 27,000枚(※)を超えます。
厨房・料理臭専用に開発されたため高い脱臭効果を有し、飲食店・商業複合施設のみならず、食品製造工場の排気対策などにも導入される確かな脱臭装置です。
(※)2021.7末時点
稼働後の悪臭苦情が急増している?!
4.脱臭装置を入れても苦情発生するケース【ベスト5例】!
① 油煙・オイルミストの発生(除去不十分)
焼き肉や焼き鳥、焼き魚などの主に炭火を扱う調理で発生する大量の油煙・煙・オイルミストは、視覚で捉えることができるので、不快感を与えやすく苦情の要因になりやすいと言えます。
視覚的に目立つため、たとえ脱臭効果が十分にでていても、苦情が発生してしまうケースも少なくありません。
油煙・煙・オイルミスト等の粒子や粉塵類は、脱臭装置では除去することはできません。
脱臭装置の一次側に、電気集塵機など、油煙捕集用の装置を設置する必要があります。
② メンテナンス不備で、脱臭性能が維持されていない
初期性能が十分な脱臭装置を導入しても、運転管理と保守点検整備が不十分であれば本来の脱臭機能を発揮することはできません。
定期的なメンテナンスを必ず実施しましょう。
導入コストが安価でも、メンテナンスコストが高くなったり維持管理が難しい装置もありますので、脱臭装置選定の際は、メンテナンス面(ランニングコスト・施工性・交換部材・交換頻度・メーカーのアフターフォロー体制)にも目を向けて検討する必要があります。
③ 規制値クリア=悪臭苦情回避、にはならない現実
脱臭装置を導入し法規制をクリアしているからといって、悪臭苦情が発生しないとは言えません。
実際、規制値クリアを謳った脱臭装置を設置しているにもかかわらず、周辺住民からの悪臭苦情が発生して装置変更を余儀なくされたケースもかなり多いのが現状です。
一旦住民苦情が発生すると、規制値に関わらず「公害対応」として行政は対応せざるを得ないということもあります。
設計段階では、周辺環境状況はもちろん、建物特性やテナント属性にも配慮した臭気対策を計画するために、しっかりとした脱臭目標値の設定が重要です。
脱臭目標値の設定には、飲食業態の臭気レベルや法規制、苦情対策観点のノウハウのある脱臭メーカーに協力を依頼することも一つです。
④ テナント毎に使用メーカーが違い、責任の所在が不明瞭
C工事などでテナント毎に脱臭メーカーが異なるケースで悪臭苦情が発生した場合、苦情要因のテナントの特定が困難になってしまい対応が遅れるケースがありますので、実績と信頼のあるメーカーに一元管理することと、設計段階での脱臭目標値の設定がポイントになります。
⑤ 脱臭性能が低い脱臭装置を導入した
安価だけのメリットで脱臭装置を選定すると、実際に施設が稼働し臭気が発生してから、想定していたような効果が得られないというケースも少なくありません。
におい発生のない設計時に対策を設計することは困難ですが、特に、悪臭苦情を回避したいという施主様・オーナー様・ディベロッパー様などの意向が明確にある場合には、可能な限りのリスク回避を試みることをお勧めします。
カルモアでは、失敗しない対策・装置選びのために、導入・設計前に実際に想定している調理の疑似臭気を発生させ、デモテスト装置によりお客様立ち合いのもと脱臭効果をご確認頂いております。
設計ご関係者のみならず、エンドとなる施主様・オーナー様・ディベロッパー様などもご同席頂くことが多いです。
厨房排気・ゼオガイアの脱臭効果デモテスト風景
5.まとめ
以上、厨房排気・飲食店における臭気問題に関連する悪臭防止法や設計時・脱臭対策時の注意点について解説いたしました。
厨房排気・飲食店の臭気問題は、建築物におけるニオイ苦情のトップです。
苦情が発生する前、できれば設計段階から適切な脱臭対策を計画し、飲食店稼働後には地域との良好な関係を実現したいものです。
環境省では、飲食店の方に向けた臭気対策のマニュアル冊子を配布しています。
脱臭装置設置のみならず、ニオイ発生を抑える様々な工夫が掲載されており、飲食店オーナーの方には非常に参考になります。
【参考】環境省:「飲食業の方のための臭気対策マニュアル」
におい対策30年のカルモアでは、ニオイ問題に対するあらゆるご相談をお受けしてしております。
設計段階、苦情発生後、いずれに関わらずまずはお気軽にご相談ください。