工場における臭いの対策は必須!発生原因や臭気対策の事例を紹介
「工場の臭い対策にはどんな対策を実施が良いのだろう」
「工場における臭気の原因はどんなものがあるのだろう」
工場の臭気にはさまざまな原因があり、原因に応じて対策をしなければいけません。
また工場の種類によって臭いの原因が異なるため、工場ごとの対策が必要です。
工場の臭いの原因を突き止めて適切な対策を実施することで、悪臭によるトラブルなどを避けられたり、従業員の健康に関する悪影響を阻止できたりします。
この記事では工場における臭いの発生原因や臭気対策の事例を紹介します。
工場で発生する臭いの原因
工場で発生する臭いにさまざまなタイプがあり、まずは臭いが発生する原因を突き止めることが重要です。工場で発生する臭いの原因を理解していないと、根本的な解決にはつながりません。
工場で臭いが発生するメカニズムによって、対策事例なども変わるため、工場での臭いの原因は理解しておきましょう。ここからは工場で発生する臭いの原因を3つ紹介します。
製造工程の排気ガス
まずは製造工程の排気ガスです。工場内ではさまざまな機械を使っているため、排気ガスが大量に発生します。
排気ガスはどんな工場でも発生する可能性があり、換気などの対策を実施しなければ工場内に悪臭が立ちこめることが考えられます。
工場内を換気しなければ、悪臭によって従業員に対して悪影響を与える可能性が高いですが、
換気をすれば工場外へ影響を及ぼすため、対策が難しいです。
物質を燃焼させた臭い
工場内ではさまざまなものを燃焼させています。工場の排出状況と立地条件によっては燃焼系の排出臭気が工場周辺で苦情となるケースがあります。
物が燃えたニオイは人間の危険察知シグナルを活性化させてしまうため、敏感に感じやすく不快度も高めてしまうので悪臭苦情になりやすいです。
物を燃焼する工程のある工場(セメントや製鉄、食品工場等)で排気風量が多い発生源がある場合は、脱臭装置の設置が必要なケースが多いです。
臭気を調査して濃度が高い場合は消臭剤の噴霧や脱臭フィルター等で物理的に吸着処理して、排気するなどの排出臭気に合わせた対策が必要です。
硫化水素の臭い
特定悪臭物質(22物質)の1つにも指定されている硫化水素は、工場での悪臭問題の中でも強い臭いの1つです。
特に硫化水素の臭いは人間が感じることができる最小濃度(嗅覚閾値)が他の物質と比較して圧倒的に低く、臭いとして感じやすいです。
腐敗した臭いは不快度も高いため、苦情になりやすく、適切な対応が求められるケースが多いです。
硫化水素は薬液洗浄法と呼ばれる方法が挙げられます。薬液洗浄法は臭気物質と薬液を接触させて、化学的中和や酸化反応を起こして無臭化させる方法です。
他の脱臭方法よりも設備や運転の費用が比較的安価なため、さまざまな工場で用いられる処理方法です。
工場における臭いで発生するトラブル
工場で発生した臭いは工場内だけではなく、工場外にまで波及します。工場内で臭いが発生した場合、まず工場内で異臭騒ぎになったり従業員に対して影響があったりするケースが多いです。
しかし、臭いは工場内だけでおさまる問題ではありません。
結果的に臭いが工場外まで漏れ出し、悪臭によって近隣の住民にまで悪影響を及ぼすことも。工場の臭いが原因でおこるトラブルを事前に把握しておくことで、より悪臭対策に重要性がわかります。
ここからは工場における臭いで発生するトラブルを紹介します。
吐き気やめまいなど、社員の健康問題
工場内で発生した悪臭が原因で社員が体調不良を起こす可能性があります。場合によっては吐き気やめまいなど、健康に対して悪影響を与えます。
体調不良ではなくても集中力の低下を招いたり作業効率が低下したりなど、工場内の臭いは知らない間に作業員に悪影響を与える可能性が高いです。
従業員の健康に与える影響を考え、社内の悪臭問題の改善に取り組みましょう。
工場の臭いに対する近所からの苦情
工場の臭いは工場内だけにとどまらず、工場外にも漏れ出すケースがあります。特に強い臭いや不快感が高い臭いを排出している場合は、近所からの苦情が寄せられてしまうことが考えられます。
工場の悪臭が原因で近所の住民とのトラブルに発展するニュースなども聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
周辺地域との良好な関係の維持という事を考慮すると、近所の方々と揉めるのは避けたいですよね。
工場で発生した臭いを外に漏らさずに工場内で悪臭対策を実施しましょう。
衣服にまで工場の臭いがつく
工場で発生した臭いは衣服にまで付着します。衣類に臭いがついた場合、体や出勤用の車にまで臭いがついてしまう可能性があります。
従業員の所有物に対して強いニオイが付着すると従業員の周りに臭いが付きまとってしまうため、
うまく職場と自宅の切り替えができなくなる可能性が高いです。
従業員のストレス増加や士気、注意力の低下にもつながってしまうため、工場内の臭い問題を改善して労働環境の改善に注力しましょう。
工場の種類別で見る悪臭発生の原因
工場で発生する悪臭は工場の業務内容によって、発生の原因が異なります。そのため、一概に工場から発生する臭いだとしても、対応も変化する可能性が高いです。
場合によっては、それぞれの工場の稼働内容によって特別な対応が必要になります。
ここからは工場の種類別で見る悪臭発生の原因について解説します。
製紙工場:高濃度の硫黄系臭気、不快度も高いニオイ
製紙工場のニオイの特徴は発生する臭気が強いことです。製紙工場で発生する悪臭の原因はクラフトパルプ製造時に発生する硫化物です。
紙を作る段階で使われる「苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)」「硫化ナトリウム」が主な原因とされています。
硫化ナトリウム(化学式:Na2S)には硫黄成分が含まれており、製紙工場の悪臭の主な原因となっています。
また、パルプを作る際に発生するリグニン水溶液を濃縮させる過程で硫化物が発生します。
上記で発生する硫化水素など硫黄化合物ガスは製造工程において必ず発生してしまうため、完全に臭いの元を断絶するのは難しいです。
製紙工場で発生する臭いの臭気濃度は数十万~数百万レベル(臭気指数50~60程度)となっており、工場で発生する臭気の中でも比較的強い部類です。
印刷工場:街中にあることが多いため、燃焼装置が必要なケースも
印刷工場は比較的街中にあることも多いです。そのため、工場付近の住宅や店舗に対しての配慮が必要となり、工場内で発生する臭いへの注意が必要です。
印刷工場で発生する臭いの原因としては、印刷機からの排出臭気である可能性が高いです。
印刷機から排出されるのは有機溶剤の臭気であり、工場でも対策しづらいため、対策できていない企業も少なくありません。
また、住宅と近い工場の場合は極力外に漏らすことができないため、排出口にて大きな臭気低減が必要とされ、燃焼装置が必要なケースがあります。
燃焼装置はニオイの低減率は大きいですが、コストも高額かつ装置規模も大きくなります。
出来れば事前に調査や影響度予測を行い、リスクを把握しておきたいですね。
金属加工工場:臭気の発生源を囲って排気を実施することで改善可能
金属を加工する工場の中でも、鋳造して部品などを作る鋳物工場は臭気苦情が発生しやすい工場と言えます。
鋳型の中に溶けた金属を流し込みますが、熱によって鋳型のプラスチックが溶けてしまい、焦げたようなツンとする強い臭いを発生させます。
工場全体を換気する屋上ベンチレーターを設置して換気をとることが多いですが、臭気が屋外に漏れてしまい、苦情を招くことも。
そこで臭気の発生源を囲って煙を集めて排気をする「局所排気」を用いて改善を行うケースもあります。
臭気の強さや周辺環境次第では局所排気と併せて脱臭装置が必要なケースもあります。
しかし、製造過程で発生する粉塵によって、脱臭装置が故障してしまう可能性があることや装置の維持管理が煩雑になるケースが多い点が難点です。
工場における臭気対策の失敗事例(動画掲載)
工場における臭気対策にも失敗はあります。臭いによって苦情が来ていた工場が臭いの対策を講じようとした場合、まず悪臭がする場所の特定から入ることが多いです。
この時に臭いが強い場所を特定しがちですが、強い臭いを発している系統が必ずしも苦情の原因となっているわけではありません。
臭いの影響度は「臭気濃度×排気風量」(OER:臭気の影響力を評価する指標)で決定します。
仮に臭気濃度が高くても排気風量が低い場合は、苦情になるほどの影響力がない場合があります。
上記のような知識を知っていないと、臭気対策を実施する排気口を間違ってしまい、余計なコストがかかることも否定できません。
工場で発生した臭いの消臭方法や対策事例
工場で発生した臭いの消臭に失敗してしまうと、工場外にまで臭いが出てしまい、トラブルに発展しかねません。
そのため、的確な消臭や防臭対策を実施して、工場内を快適にすることで健全な工場運営が可能です。では、実際に工場に発生した臭いに対してどのような対策が実施されているのでしょうか。
工場で発生した臭いの消臭方法や対策事例として3つ紹介します。
工場で発生した臭いの消臭方法
工場で発生した臭いの消臭方法としては主に以下の過程で検討を行います。
- 臭いの元(問題となる発生源)の特定
- 脱臭システムの導入検討
- 予防方法(防臭対策)の検討
まずは工場内のどの機械や工程から臭いが発生しているのかチェックしましょう。
チェックの際にはどのようなニオイ(臭質)が問題となっているのかヒアリングできると良いです。また、苦情の発生時間なども把握することが出来れば、対象とすべき発生源の絞り込みがしやすいです。
脱臭システムを活用することで、工場内の臭気を排除できます。脱臭方法に関しては必要な対策規模や予算などによって変化するため、企業ごとの検討が必要です。
また、対策方法の検討に際しては拡散シミュレーション等を用いて、必要な脱臭効率を求めて選定していくことが望ましいです。
脱臭について考えるとともに、臭いの予防についても考えなければいけません。臭いを予防する方法としては臭気が発生する材料以外の代替品の模索や工程稼働時間の見直し、発生源の管理の徹底などが挙げられます。
その他にも排気の排出方法を工夫することでも改善するケースもありますので、必ずしも脱臭装置に頼らなくてはならないという訳ではないです。
脱臭装置以外の対策方法で対策を完了できた方が対策に掛ける費用を削減できることが多いと思いますので、出来る限り工夫することを検討すると良いでしょう。
悪臭を0にする対策だけではなく、消臭剤噴霧機を作業スペースに配置するだけでも臭いを緩和できるケースもあるため、まずは予算にあわせた対応を実施してみるのも良いでしょう。
工場で発生した臭いの対策事例①:印刷工場における排気対策
印刷工場では、一般的な塗装臭とは異なり、少し変わった有機溶剤臭が発生します。
印刷工場は住宅エリアの近くにある場合が多いことから苦情問題にもなりやすいです。
排気風量も比較的大きく、独特の有機溶剤臭気のため、健康に悪影響を与えそうなイメージを強く持たれることで苦情となることがあります。
工場排気と住居エリアが近い場合については燃焼装置などの安定して高い脱臭効率が得られる装置を導入すべきです。
一方で、有機溶剤臭に対して有効性の高い消臭剤もあります。
工場の排出状況や立地条件次第ですが、消臭剤のスプレーやスクラバー装置といった比較的小規模の対策装置で対策を行うことが可能なケースもあります。
特にマイクロゲルスプレーの噴霧は装置が比較的小型で安価なので、コストを抑えて対策することが可能です。
工場で発生した臭いの対策事例②:鋳造工場における工場内臭気と排出臭気の改善
工場の建屋や敷地内外で臭気調査を実施。建屋内で臭気が強くなる場所を特定して、優先順位を決定しました。
臭気の強いエリアにて臭気が発生する箇所を極力囲い、局所排気を用いて対策。局所排気の排出臭気が周辺で問題にならないように、排気中に消臭剤を噴霧しました。
結果、建屋内の臭気も改善し、排出臭気の周辺影響も大きく低減。苦情を抑えることが出来ました。
工場で発生した臭いの対策事例③:自動車塗装工場における排出臭気対策
自動車工場において塗装排気は苦情になりやすいです。大きな工場になると塗装に関わるラインの規模も大きくなるため、まずは排気口の対策優先度の順位づけから始める必要があります。
塗装工程は排気の風量が大きいことが多く対策装置の規模が大きくなりがちです。
予算や設置スペースの確保が難しくなることから複数ある排気口の中から周辺への影響度が高いラインに対して、消臭剤マイクロゲルスプレーシステムを導入することで、周辺への影響度の低減が期待できます。
先述しましたO.E.Rの概念や拡散シミュレーションを用いて、どこまで対策を行う必要があるか事前に検証することが大切です。
(目標値の設定と対策規模の検討)
工場で発生する臭いには原因を特定して、適切な対処が必要
工場における臭気の影響度を把握するには、臭気拡散シミュレーションが効果的です。
無料で使用可能なシミュレーションソフトもありますので、まずは参考としてそちらからお試ししてみると良いと思います。
弊社でも独自開発した臭気拡散シミュレーション「KaLmoS(カルモス)」があります。
これは、比較的広い範囲における臭気の拡散シミュレーション精度を向上させたシミュレーションソフトです。
KaLmoS(カルモス)は高いシミュレーション精度を実現し、目に見えないニオイを可視化することで排出臭気の周辺影響度の把握や脱臭装置以外の対策方法の模索等臭気対策における様々な用途で用いられています。
何れにしても『何のニオイが』『どれぐらいの強さで』『どれぐらいの量を』『どこまでの範囲で』を知ることが工場臭気対策では大切です。
弊社では一括した調査・測定及び対策ご提案までを行うサービスとして臭気アセスメントというサービスをご用意しております。
カルモアの臭気アセスメントについての詳細はこちら:
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