セメント製造工場／排気 脱臭装置の導入事例(キルン・石炭乾燥工程)

セメント製造工場におけるお客様のニオイ課題

近隣からの臭気苦情があり、工場内だけでなく本社でも取りざたされる規模の問題となってしまった。
なるべく早く苦情を解決したいとご相談頂きました。

＜工場規模＞

キルン排気：　　約6,300㎥/min　(3,140㎥/min×2基)

石炭ミル排気：　約1,000㎥/min　(420㎥/min×1基、540㎥/min×1基)

苦情回避するための施策

悪臭苦情の原因となっている排気系統の見極め

排気系統が複数にわたっていた為、まずは臭気アセスメントを実施して、影響度の強い排気系統の特定とと工場周辺で感知される臭気の臭質と強度を確認することをご提案しました。

「どんな臭気を」「どこから」「どれくらい」排出しているのか？

においの排出状況を正しく把握するには、データの視覚化（見える化）が重要です。

影響度の強い排気系統の特定

影響度の大きさはOER(Odor Emission Rate,臭気排出強度)で評価されます。OERは「臭気濃度」と「排気風量」から算出することができ、OERの最も大きい排気口が最も影響度が高いです。

OER＝臭気濃度×排気風量(m3/h)　

工場周辺で感知される臭気の臭質と強度の確認

工場周辺で感知される臭気の調査は、臭気判定士が実際に工場周辺を歩き回るなどして臭気の質と強度を評価して、マッピングするといった流れで行います。苦情対策の場合、苦情の原因となっている臭気を把握する必要があるため、この周辺調査が非常に重要となります。

こちらの工場でも、最初は風量の大きいキルン排気が苦情の原因と予想されましたが、周辺調査により苦情発生箇所の付近ではキルン臭ではなくタール臭が強いと判明しました。

キルン臭とは異なり、タール臭は少し灯油っぽい臭気が混ざっています。

様々な現場で、工場排気のにおいを嗅ぎ分ける経験を積んだ臭気判定士が実施するからこそ、意味がある周辺調査です。

臭気の広がり方の予測 (拡散シミュレーション)

シミュレーションソフト「カルモス」でニオイを視覚化し、タール臭がどのように広がるかを確認したところ、ピッタリと苦情発生箇所と一致。タール臭を発する石炭ミル排気が苦情の主原因であるとして、優先的に対策するようご提案しました。

一般的にセメント工場様ではキルン排気が悪臭苦情原因となるケースが多いですが、

今回は当該工場の地理的及び周辺環境要因により石炭ミル排気が主原因であると特定し、対策のご提案を致しました。

デモ試験

ダクトから実排気を引き出して、脱臭性能についてデモ試験を実施しました。

デモ試験では、薬剤と臭気の相性や効果的な噴霧量、臭気との接触時間を検討していきます。

導入した機器と効果

機器仕様

機器型式：消臭剤マイクロゲルスプレーシステム

使用消臭剤：マイクロゲルC-TKをベースにしたカスタマイズ製品

処理風量：No.1排気　420m3/min、No.2排気　540m3/min

効果

脱臭効率：87～90％

対策後の状況

必要脱臭効率を試算したうえで、実排ガスによるデモテストを行い、最適な消臭剤や装置稼働条件にて導入していただいた結果、苦情を解決することができました。

効果測定でも高い効果が得られており、周辺調査においても消臭剤噴霧ON/OFFにて臭気が改善される事を確認しております。

また風向風速と連動して、装置の稼働条件を調整する仕様にしたことで、ランニングコストを大幅に低減することができました。

導入後も複数回の効果測定を実施し、より脱臭効果を向上させるための消臭剤のリニューアルなどを試みています。

まとめ

今回はセメント工場での、臭気対策事例をご紹介いたしました。

臭気アセスメントにより苦情の原因となる排気口を確認し、最適な薬剤と脱臭装置を導入した結果、苦情を解決することができました。

加えて、風向きに合わせて消臭剤の噴霧量を調整することで、コストも低減することができました。

【セメント工場】消臭剤噴霧テスト参考値　

ニオイにお悩みの際は、ぜひ一度プロにご相談くださいませ。