香料工場で悪臭苦情が発生/脱臭装置(大小4種類)の導入事例
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臭気成分
香料の製造・研究開発工程から排出する多様な成分 (果物・ヨーグルト・醤油・花の香り・メントール臭など)
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発生場所
エッセンス給気系統、調香室排気系統、排水処理設備排気系統 、スプレードライヤー排気系統
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導入企業
食品香料工場
香料製造工場において、周辺住民による悪臭苦情が発生。設備の排気は4系統あり風量は1~160m3/minまで大小様々、排出されるニオイの種類・臭気強度もバラバラです。
過剰な設備導入とならないよう、臭気測定・調査により悪臭苦情原因を特定し、4種類の脱臭装置を導入して無事苦情を解決いたしました。
工場近隣で悪臭苦情が発生! 香料工場のニオイ課題
工場近隣に住む地域住民より悪臭苦情が発生しました。
苦情解決を試みるべくカルモアへ、香料排気向け脱臭装置に対するご相談を頂きました。
本香料工場では、排気系統ごとに臭質(ニオイの種類)や臭気強度(ニオイの強さ)が異なっており、特に「調香を行う研究棟」では、臭気強度が非常に高い状況でした。
既に悪臭苦情が発生しているため、失敗は許されません。
しかしながら、燃焼法など脱臭効果の高い装置ほど高額であるため、全ての排気系統に高額の脱臭装置を導入すれば、設備投資は膨大になってしまいます。
多種多様の臭気レベル、大小さまざまな排気風量の中、コストをできるだけ抑え、確実に悪臭苦情を収める対策方法が求められました。
事例ポイント
- 強烈な臭気強度の排気がある
- 大風量・小風量の両方の系統がある
- 系統ごとに臭質(においの種類)がバラバラである
- 同系統の排気でも、日時により臭気の強さが変動する
- 近隣から悪臭苦情が発生している
悪臭苦情に対する3つの施策と対策フロー
本件では、排気系統が多く、臭気強度もさまざまであることから、最も効率の良い悪臭苦情解決策の設計には、なによりもまず臭気発生状況の適切な把握が不可欠でした。
そのためまずは現地調査を行い、脱臭対策の有効性をデモテストと臭気拡散シミュレーションで検証したうえで、本装置の設計・設置へと進めていきました。
対策のフロー
施策ポイント1:「強い臭気×大風量」への対策
Problem
強い臭気に対して高い脱臭効果を要する場合、通常は「燃焼法」が推奨されます。
しかし、全排気系統に対して燃焼脱臭装置を導入するには多大なコストがかかるため、現実的ではありません。
Answer
●臭気の性質・排気風量・臭気強度に合わせて、系統毎に脱臭方式を検討。
●実際の排気を用いて系統毎に効果デモテストを実施。
●最も費用対効果の高い脱臭方法をそれぞれ選定し、実機の失敗リスクを回避。
デモテストの内容
デモテストでは、実際に排出される臭気を用いて脱臭装置の小型版となるデモテスト機を稼働し、臭気と脱臭装置の相性・除去効果を確認します。
テスト結果をもとに実機装置の仕様を検討し、各系統に合わせた仕様にカスタマイズすることで、費用対効果の高い脱臭装置をご提案します。
今回は燃焼装置ETOを設置する系統を最低限の数に絞り込むため、マイクロゲル消臭剤、ゼオガイア脱臭装置にてデモテストを実施しました。
その結果、最終的にETOの導入は1台におさえ、「マイクロゲル消臭剤(C-NT3)」と「ゼオガイア脱臭装置」を複数台導入する方針に決まりました。
▼ゼオガイア脱臭装置のデモテストの様子
※ 現在「マイクロゲル消臭剤(C-NT3)」は、より技術・性能を進化させた「マイクロゲル消臭剤(D-NT3)」と型番を変更してお取り扱いしております。
施策ポイント2:「多種多様なニオイ、臭気強度が変動」への対策
Problem
本工場では系統ごとに臭気が異なるため、全系統に同じ脱臭装置が適するとは限りません。
また同じ系統でも曜日や時間帯によって臭気強度が異なるため、強い臭気まで網羅できる必要がありました。
Answer
●臭気レベル・臭気種類への対応幅の大きい「セラミックフィルター」、臭気に合わせて選定する「マイクロゲル消臭剤」の2種類の使い分けと絞り込み。
●系統毎に費用対効果が最大化されるよう、仕様をカスタマイズ。
ゼオガイアフィルター
ゼオガイアフィルターは物理吸着にて脱臭するため、多様な臭気に対して効果を発揮します。
多種の香りが発生する系統でも、1台で幅広く対応できると見込んでゼオガイアフィルターを用いた脱臭装置をご提案しました。
本件ではデモテストにてフィルター層数や面風速の調整を行い、フィルター性能を最大限引き出すことに成功。比較的に風量が大きく強い臭気でしたが、目標達成に十分な脱臭効果が得られました。
マイクロゲル消臭剤/バブリングテスト
マイクロゲル消臭剤は粘性の高い薬剤で、高分子鎖による物理的な脱臭効果に加え、化学反応も利用して脱臭します。
臭気物質との化学的な相性を見極める必要があるため、対象の系統ごとに複数種類の香りにて、消臭剤のバブリングテストを実施しました。
本件では工場の担当者様のご協力もあり、全種類とはいかないまでも5種以上の香りを対象にテストを実施して脱臭効果を確認。本工場で使用する薬剤として、最適な消臭剤を選定することができました。
▼マイクロゲル消臭剤(消臭剤自動希釈装置) | ▼バブリングテストの様子 |
施策ポイント3:「近隣の悪臭苦情」への対策
Problem
脱臭装置を導入したからと言って、悪臭苦情が必ずしも解決するわけではありません。誤った設備設計で対策後も苦情が解消されないケースは多くあります。
特に本件では臭気強度の大きさ・排気系統の多さなどにより設備コストが大きくなることが予想されたため、対策後の失敗を回避すべく、確かな対策案の設計が求められました。
Answer
●苦情地域・敷地境界への臭気拡散をシミュレーションし、苦情解消の有効性を視覚的に実証。
●脱臭装置導入による臭気低減効果を確認し、実機導入後の失敗を回避。
拡散シミュレーション
排出された臭気の広がり方を、専用のシミュレーションソフト『KaLmoS(カルモス)』にて検証。
視覚的に臭気の拡散状況を把握し、装置導入後の周辺地域への影響度を確認できます。
本件ではデモテストの測定結果を用いてシミュレーションを行い、脱臭装置の導入による臭気低減の効果や装置の必要性を再認識して頂きました。
シミュレーションでは脱臭装置の有無による近隣への影響度の差を視覚化した結果を報告書としてご提出します。シミュレーションの結果が手元に残るため、社内稟議や予算申請時の資料としてもご活用頂けます。
▼シミュレーション結果(イメージ図)
導入した脱臭装置の一覧:除去率と費用
効果デモテスト・臭気拡散シミュレーションなどにより、排気系統毎に最適な脱臭装置・対策方法が確定しました。
その後、設備・装置の設計、製造、設置工事、試運転と脱臭効果の測定、を経て、本件を完了いたしました。
装置スペック一覧
排気系統別に、4種類の脱臭装置を導入しました。
全系統一律の装置を導入する場合と比べ、はるかにコストを抑え、かつ工場全体として脱臭効果(=悪臭苦情回避の効果)が最大化される対策方法となりました。
系統名 |
エッセンス排気 スプレードライヤー排気 |
エッセンス給気 品質管理/調香室 給排気 |
調香研究室排気 | 排水処理排気 |
風量 |
12.5㎥/min ~ 160㎥/min |
20㎥/min ~ 127㎥/min |
1.0㎥/min | 8.3㎥/min |
臭気濃度(原臭) | 320~100,000 | 40~2,500 | 5,000~250,000 | 5,000 |
脱臭方式 | 消臭剤、スクラバー方式 | フィルター吸着方式 | 触媒燃焼方式 | フィルター吸着方式 |
装置名 | マイクロゲル消臭剤+湿式スクラバー | ゼオガイア | ETO | ケミカルフィルタ |
台数 | 6台 | 8台 | 1台 | 1台 |
脱臭効率 | 約50~70% | 約60~95% | 約94~98% | 約90% |
トータル費用目安* | 約80,000,000円 | 約20,000,000円 | 約10,000,000円 | 約1,000,000円 |
*装置本体価格のみ(消臭剤費、輸送費、現地工事費等含まず)
対策完了までの期間
臭気調査から全系統への装置稼働まで 約1.5年
※長期テスト期間を含みます。
※最短納期は別途お問い合わせください。
脱臭装置導入後の効果
各系統に合わせて最適化した脱臭装置を導入した結果、悪臭苦情は無事に収まりました。
装置導入後も継続して、定期的な設備メンテナンス・マイクロゲル消臭剤の継続利用・ゼオガイアフィルターの定期清掃・交換、など保守・管理を続けております。
付記:
本件対策完了後から時間経過し、客先より再度ニオイのご相談がありました。
新型コロナウイルスなどの影響により生産量や地域環境に変化があり、求められる脱臭性能が変わってきたとのことです。
そこで現在では、マイクロゲル消臭剤の調合・適応品番の見直しなどのご提案により継続して改善対策をご支援しております。
まとめ
香料の製造や研究開発を行う工場での、臭気対策事例をご紹介いたしました。
強い臭気が発生する排気系統や多種多様な臭質に対して、全系統一律の設備対策を行うのではなく、排気系統毎に最適な脱臭装置を選定することで、最もコストを抑えつつ、地域の悪臭苦情も解決いたしました。
装置の納品後も苦情の再発を予防するべく、継続して定期的なメンテナンスの実施や装置の見直しなどをご提案させて頂いております。
特に工場における臭気対策は高額な設備投資となり、失敗リスクは極力避けたいところです。
「装置を入れたのに苦情が収まらない」というケースは少なくありません。
ニオイのお悩みは、ぜひ一度プロにご相談ください。
【ご参考】ノウハウ解説のページ
導入製品・サービスについて
お客様の臭気問題を、調査から対策まできっちりと確実に導くお手伝いをさせていただきます。
人間の嗅覚によって臭気を測定するもので、いくつかの物質が混ざり合った複合臭を判定することできます。
圧倒的な消臭能力とコストパフォーマンスにより、各種産業工場で大きな支持を集めている【マイクロゲル】。2002年発売以来日本のみならず世界11か国での使用実績を誇ります。
小~大風量まで対応できる、調理臭気対策に最適なフィルター式脱臭装置です。
臭気物質を燃焼させて脱臭するため、高い脱臭効果が期待されます。小風量だけど強い臭気を徹底的に脱臭したい場合に適した脱臭装置です。
カルモアが独自開発したシミュレーションソフト「KaLmoSカルモス」は、においシミュレーター(環境省配布)をはるかに超える精度と現実性で、悪臭苦情の回避・解決、無駄と失敗のない脱臭装置の設計、悪臭防止法の規制対応を実現します。